先週半ばには読了していたものの、
中々感想を書くに書けなかった『結城秀康』です。
(長浜の二人に関しては、7/6の記事参考)
既に『義槍鬼九郎』を読み始めてるんで、
今更感が否めませんが・・・・。
ちょっと長くなるんで、後は追記で。
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しばりょの『関ヶ原』や『豊臣家の人々』で
妙に印象に残っていたのがこの結城秀康という人で、
自分的に殆ど馴染みの持てない徳川側の中でも、
唯一興味を持たせてくれた人です。
自分でもなんでこんな印象が残ってるのか
良く分かんないまま記憶してたんですが、
三成の失脚時に領地まで護送し、
名刀「吾郎正宗」(現「石田正宗」)を譲り受けたのが
この人だったからかとも思ったんだけど、
これは後から読み返してみて、そういえば、って感じで思い出したんで、
やっぱ、妙なインパクトはこのひと出自のせいなのか・・・・。
結城秀康に関しては、まあウィキかなんかで調べてもらうとして
(>他人任せか)
家康の次男でありながらも、
秀吉の養子としては宇喜多の華やかさとは、
ホント対称的な人生を送った人だなあと。
勉強不足で恐縮ですが、勇猛で秀でた人だったにも関わらず、
この人意外な事に一度も戦の最前線に赴く事がなかったんですね。
その葛藤というのが、本書では秀康のどこか歯車の噛み合わない
数奇な運命の一つの軸とも言えそうでした。
同じ養子にも関わらず、唐御陣で総大将を担った宇喜多秀家と、
戦はあっても一度も出陣機会を得ないまま、
またこうして名護屋待機を授かった自分とを思い懊悩する秀康。
今まで、周りに対して自分を卑下する事もなく、
運命を自分なりに受け止め決して自分を失わずに、
冷静に状況を見続ける飄とした姿勢、
生きるに任せた芯の通った勇壮かつ聡明な人物として
描かれていたため、
関ヶ原でやっと華々しい戦に臨むことができると意気込む秀康の下に、
上杉への守りの為宇都宮留守居を命じられ、
絶望のまま激する秀康の姿は非常に生々しく悲壮感すらありました。
関ヶ原後、越前に封じられた晩年の秀康の達観したような
どこか感じる物哀しさは、決して暗いばかりではなく、
一貫して受け止め続けた秀康の歯車の噛み合わない運命
そのものだったような気がします。
『余人には分からぬかもしれぬが、覚悟を決めて、
運命に身を任せるのは、なかなか根性も度胸も要るものだ』
という台詞が
この結城秀康という人の人生の全てを物語っていると思います。
全体を通してですが、結城秀康の描写もさることながら、
この作者の人物描写は本当に秀逸というに値します。
既読の立花宗茂の場合も思ったのですが、
とにかく脇に出てくる人物の描写が非常に魅力的で、
その人物自体に興味を覚えずには入れません。
今回の結城秀康に関しては、守役であった本多重次、
幼い於義丸に男の意地を示す鳥居元忠、
幼い日に出会った織田信長との遠乗りの記憶、
家康と秀康の親子というにはあまりにも冷静な観察眼、
石田三成、福島正則などの描写も巧みに書かれていたのですが、
中でも、三成襲撃の際に登場した佐竹義宣は
たった数行一言のみの記述だったのですが、
『あーの、ごしゃっぺどもが、何をやらかすんだか』と
お国言葉を吐き散らしながらの登場は、
それだけでも思わず噴出してしまうほど
十分この人物の人となりを表わすようで、
佐竹義宣に関しても調べてみようと思わせるには十分でした。
関ヶ原時に出てきた上杉景勝の描写も秀逸で、
秀康の書状を読んだ景勝が
『結城宰相は、お幾つになられたか』と訊き、
御歳、二十七歳になりますと使者が答えるのを聞くと、
一言『お若い』と呟く場面、
二代将軍秀忠の慶弔の席で、隣に座った秀康に景勝が
越前の雪の具合を聞いた際、
秀康がいい加減嫌になると答えると、
『それがしはあれを、五十回ばかり経験してまいりました』と
ふと微笑してみせる場面など、
秀康に一目置いている景勝の姿が垣間見れ
非常に印象深く思いました。
三成に関しても、当初から秀康には好意的に描かれてましたが、
やはり正宗を譲り渡す場面では、その凛とした姿は健在で、
三成を思うあまり、
『治部どの、どうか、煽られないで下さい』と
反逆すれすれの言葉を漏らした秀康に、
『お立場というものがある。
そういうことを仰せになってはなりませぬ。』と静かに諌め、
二人で涙を薄く湛える場面、
また直接的には秀康は関係ないのですが、
その後すぐあとに描写される、
佐和山での『わしが、虎の威を借る狐か』など
鋭利な三成の精神的に疲労が来ている揺らぐ内面を
呟かせた場面など、
本当に読ませる作者だなあと唸らせて頂きました。
しかしやはり特筆すべきは秀康と秀忠の関係で、
史実的には余り目立たない秀忠ですが、
この本では非常に魅力的な人物に描かれており、
秀康が自分の運命に翻弄されながらも
力強く受け入れているのと同様、
自分の力量を知った上で、個性を持たず家康に従順に応える事で
徳川の総領を担おうとする姿と、
終生秀康を兄と慕い、「越前家はご制外」とまで言わせ
秀康の迎えへ自ら足を運ぶ姿などその親愛の程が見え、
非常に胸が打たれる場面でもありました。
同作者の著『立花宗茂』でも思いましたが、
あちらでも秀忠は非常に温厚で魅力的な人物に描かれ、
作者が秀忠自体に興味を持っているのかなとも
思ったんですがどうでしょう。
もろ弟属性で描かれる秀忠が犬の様で堪りませんでした。
戦国もので兄弟愛を求めるものではありませんが、
殺伐とした中、
和ませてくれる二人の関係は非常に心地良いものです。
『兄上には、できるだけ、
何にも縛られずにいていただきとうございます』
それは、凄いな、と秀康は子供のような顔をして笑った。
『まるで、背中に羽が生えたような気分だ』
結城秀康享年三十四。
死因は梅毒という説があると言うことですが、
どちらにしろ早すぎる死だと思います。
感想が長くなりましたが、
それだけ愉しめた作品だったという事で。
最近の中では一番にお薦めしたい作品となりました。
他の志木沢作品も読んでみよう。
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妙に印象に残っていたのがこの結城秀康という人で、
自分的に殆ど馴染みの持てない徳川側の中でも、
唯一興味を持たせてくれた人です。
自分でもなんでこんな印象が残ってるのか
良く分かんないまま記憶してたんですが、
三成の失脚時に領地まで護送し、
名刀「吾郎正宗」(現「石田正宗」)を譲り受けたのが
この人だったからかとも思ったんだけど、
これは後から読み返してみて、そういえば、って感じで思い出したんで、
やっぱ、妙なインパクトはこのひと出自のせいなのか・・・・。
結城秀康に関しては、まあウィキかなんかで調べてもらうとして
(>他人任せか)
家康の次男でありながらも、
秀吉の養子としては宇喜多の華やかさとは、
ホント対称的な人生を送った人だなあと。
勉強不足で恐縮ですが、勇猛で秀でた人だったにも関わらず、
この人意外な事に一度も戦の最前線に赴く事がなかったんですね。
その葛藤というのが、本書では秀康のどこか歯車の噛み合わない
数奇な運命の一つの軸とも言えそうでした。
同じ養子にも関わらず、唐御陣で総大将を担った宇喜多秀家と、
戦はあっても一度も出陣機会を得ないまま、
またこうして名護屋待機を授かった自分とを思い懊悩する秀康。
今まで、周りに対して自分を卑下する事もなく、
運命を自分なりに受け止め決して自分を失わずに、
冷静に状況を見続ける飄とした姿勢、
生きるに任せた芯の通った勇壮かつ聡明な人物として
描かれていたため、
関ヶ原でやっと華々しい戦に臨むことができると意気込む秀康の下に、
上杉への守りの為宇都宮留守居を命じられ、
絶望のまま激する秀康の姿は非常に生々しく悲壮感すらありました。
関ヶ原後、越前に封じられた晩年の秀康の達観したような
どこか感じる物哀しさは、決して暗いばかりではなく、
一貫して受け止め続けた秀康の歯車の噛み合わない運命
そのものだったような気がします。
『余人には分からぬかもしれぬが、覚悟を決めて、
運命に身を任せるのは、なかなか根性も度胸も要るものだ』
という台詞が
この結城秀康という人の人生の全てを物語っていると思います。
全体を通してですが、結城秀康の描写もさることながら、
この作者の人物描写は本当に秀逸というに値します。
既読の立花宗茂の場合も思ったのですが、
とにかく脇に出てくる人物の描写が非常に魅力的で、
その人物自体に興味を覚えずには入れません。
今回の結城秀康に関しては、守役であった本多重次、
幼い於義丸に男の意地を示す鳥居元忠、
幼い日に出会った織田信長との遠乗りの記憶、
家康と秀康の親子というにはあまりにも冷静な観察眼、
石田三成、福島正則などの描写も巧みに書かれていたのですが、
中でも、三成襲撃の際に登場した佐竹義宣は
たった数行一言のみの記述だったのですが、
『あーの、ごしゃっぺどもが、何をやらかすんだか』と
お国言葉を吐き散らしながらの登場は、
それだけでも思わず噴出してしまうほど
十分この人物の人となりを表わすようで、
佐竹義宣に関しても調べてみようと思わせるには十分でした。
関ヶ原時に出てきた上杉景勝の描写も秀逸で、
秀康の書状を読んだ景勝が
『結城宰相は、お幾つになられたか』と訊き、
御歳、二十七歳になりますと使者が答えるのを聞くと、
一言『お若い』と呟く場面、
二代将軍秀忠の慶弔の席で、隣に座った秀康に景勝が
越前の雪の具合を聞いた際、
秀康がいい加減嫌になると答えると、
『それがしはあれを、五十回ばかり経験してまいりました』と
ふと微笑してみせる場面など、
秀康に一目置いている景勝の姿が垣間見れ
非常に印象深く思いました。
三成に関しても、当初から秀康には好意的に描かれてましたが、
やはり正宗を譲り渡す場面では、その凛とした姿は健在で、
三成を思うあまり、
『治部どの、どうか、煽られないで下さい』と
反逆すれすれの言葉を漏らした秀康に、
『お立場というものがある。
そういうことを仰せになってはなりませぬ。』と静かに諌め、
二人で涙を薄く湛える場面、
また直接的には秀康は関係ないのですが、
その後すぐあとに描写される、
佐和山での『わしが、虎の威を借る狐か』など
鋭利な三成の精神的に疲労が来ている揺らぐ内面を
呟かせた場面など、
本当に読ませる作者だなあと唸らせて頂きました。
しかしやはり特筆すべきは秀康と秀忠の関係で、
史実的には余り目立たない秀忠ですが、
この本では非常に魅力的な人物に描かれており、
秀康が自分の運命に翻弄されながらも
力強く受け入れているのと同様、
自分の力量を知った上で、個性を持たず家康に従順に応える事で
徳川の総領を担おうとする姿と、
終生秀康を兄と慕い、「越前家はご制外」とまで言わせ
秀康の迎えへ自ら足を運ぶ姿などその親愛の程が見え、
非常に胸が打たれる場面でもありました。
同作者の著『立花宗茂』でも思いましたが、
あちらでも秀忠は非常に温厚で魅力的な人物に描かれ、
作者が秀忠自体に興味を持っているのかなとも
思ったんですがどうでしょう。
もろ弟属性で描かれる秀忠が犬の様で堪りませんでした。
戦国もので兄弟愛を求めるものではありませんが、
殺伐とした中、
和ませてくれる二人の関係は非常に心地良いものです。
『兄上には、できるだけ、
何にも縛られずにいていただきとうございます』
それは、凄いな、と秀康は子供のような顔をして笑った。
『まるで、背中に羽が生えたような気分だ』
結城秀康享年三十四。
死因は梅毒という説があると言うことですが、
どちらにしろ早すぎる死だと思います。
感想が長くなりましたが、
それだけ愉しめた作品だったという事で。
最近の中では一番にお薦めしたい作品となりました。
他の志木沢作品も読んでみよう。
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